2009年8月26日水曜日

8月25日~上流概念へ~

 「技術的失敗」についての本を読んでいる。よくハリウッドのパニック映画などでは、下水道の中に爆弾が投げ込まれてマンホールの蓋が飛び出すシーンを目にするが、通常の感覚ではマンホールは下に落ちないように安全設計するもの。ただし、下水道が逆流したり、下水道内の気圧が高まれば、蓋が上に飛び出すことも想定される。一つの現象からそうしたリスクを予想し、マンホールの蓋を上からの圧力にも下からの圧力にも耐えられるように設計するという「安全の思想」。こうした安全の思想は技術的失敗の中でも応用がきくが、もちろん事務処理やそのほかの成果物を製造する場合にも応用ができる。
 たとえば書籍の誤字・誤植も失敗の一つだから、単に誤字・誤植、もしくは法令改正への未対応といった細かな「失敗」に限定するのではなくて、「成果物の瑕疵を防ぐ」という上流概念にいったんあがって、そこから現場を俯瞰してみると、新たな防止策ができあがる可能性も高い。畑村洋太郎先生の失敗学の本にも「上流概念へ」というくだりがあったのだが、この感覚、最近になってようやく肌身にしみてわかってくる。「他人事」ではなく、その「他人事」と「自分事」をつなぐ上流概念さえ発見すれば、けっして他人のミスは無関係ではすまされない。自分にも要因さえ共通するものがあれば、同じようなミスや形を変えたミスが将来訪れるリスクはあるのだから、新聞記事や周囲の出来事と自分をつなぐ上流概念の発想は大事だと思う。

0 件のコメント: